樋口の仮面

 

くまリュック編/女性声優 Y・N さんの場合

人は見た目で判断する

今回は、私のお友達声優 Y・Nちゃんの思い出話よ。Yちゃんは昔、ロリータファッション大好きっ子だったの。(今でもかしらね)
ある時、ナレーションのお仕事の現場に、ツインテール&くまリュックというロリロリな格好で行ったんだけど、そのせいなのか、制作会社の人やクライアントが、なにやらヒソヒソしだしたんですって。(「他の声優さんの方が良かったんじゃない?」等)
Yちゃんは、お仕事の開始時間までロビーで待ってたんだけど、そのヒソヒソの内容がにわかに聞こえちゃって、くそーー!!実力見せたろやないけーー!!って、一気にやる気が爆発したらしいわ。
そしていざナレ録りが始まると、その風貌からは想像できないような超大人ボイス読みで、きっちりカッチリ仕事をこなして見せたんですって!ヽ(=´▽`=)ノ
それにしても、結局人って見た目で判断するものなのよね…。

くまリュック編

がんめん編/大事な日に限って。

親不知おそるべし
初めて事務所に挨拶に行った日のこと。前日の親不知の抜歯で顔が特殊メイク状態に腫れ上がって大変なことになっていた私。
「あぁ…「やっぱり合格はなかったことに」なんて言われたらどうしよう…」と、ネガティブな妄想ばかりしていたのだけれど、いざ事務所に行ったら、誰も何も言わないの。誰一人として、私の尋常でないこの顔の腫れについて、一切触れてこないのよ…。
おかしい!おかしいわ!!どう見ても私のこの顔、異常でしょう!?
どうしたのよ!?笑いなさいよ!!笑うがいいわ!!ホーーッホッホッホ!!…
なんて脳内で1人芝居が始まっていることに周囲の人達は気付くはずもなく、ごくごく普通に私と挨拶を交わしたわ。
今でも不思議なのよ。なぜあんなにもみんなが無反応だったのか。もしかしたら全部私の妄想…!?なんて思って、事務所のトイレに駆け込んで鏡を見てみたけど、どう見ても「まんぷくふとる」だったわ…。

がんめん編

がまん編/膀胱は鍛えられない。

極限まで我慢
この仕事をするにあたって私の一番の敵とは何か。それは「尿意」よ!
過剰な緊張が尿意をもたらし、その緊張が喉の乾きを誘発し水を飲む。
これを繰り返していくうちに、やがて壮絶な尿意が全身を襲うようになり、集中力がすっかり奪われてしまうの。
うっかり仕事前にコーヒーなんかガブ飲みしてしまった日にはあなた!もう膀胱の栓は開きっぱなしみたいなものよ!
ガソリン漏らして走ってる車みたいなものよ!でも頻繁にスタジオの出入りはできない。
特に新人の頃はそう。中で先輩達の仕事ぶりを見て勉強しなくてはならないから、無闇に出たり入ったりはできないわ。
でもね。生理現象の自然な欲求は止められない…orz 膀胱を鍛える方法を色々考えて試してみたのだけれど、友達に「病気になるからやめなさい」と言われたわ…。
悔しいけれど、尿意には勝てないのよ…!(怒)

がまん編

おこられる編/「出トチリ」恐怖症。

みんなの前でド叱られたわ
(※「出トチリ」→ 自分の出番を間違えるという意味の業界用語)
これは、私が声優として仕事を始めてから1〜2年しか経っていない頃の話よ。
ある洋画(長編)の吹替仕事の現場だったのだけど、私の大好きな先輩さんのお芝居につい見入ってしまって、なんと自分の出番を忘れてしまったの!これが本番じゃなくテストだったからまだ良かったものの、それでもディレクターさんは鬼の形相。と、そんなところへきて、なんと二度目の出トチリをやらかした私!(←何をボケっとしていたのか)
ディレクターさん、ブースに入ってきてキレる。私、頭真っ白になる。声優生命オワタ…と思う。
でも続きをやらなきゃならない!泣くに泣けない!!だってお仕事ですもの!orz
この時のおかげで、出トチリは切腹レベルの罪だということを学んだわ…。

おこられる編

あえぐ編/みんなの前でもあえぐわよ。

もう何年も前の話だけれど
とあるアニメの現場だったのだけれど、私の役はなんと「AV女優」だったの。
収録当日は、当たり前だけど私の後ろにギャラリー(共演者)がズラリ…。
普通アダルトものの収録だと、ブースに一人づつ入って順番に録っていくっていうのがほとんどなのだけど、これはごく普通のアニメ。だから、あくまで登場人物の一人としてそこでみんなと一緒に演じなければならなかったの。
でもね、マイク前に立ったら恥ずかしい気持ちなんて吹っ飛んで、必死で喘いでいたわ。
ディレクターさんから「ちょっと生々しいです」とダメ出しを頂いてしまったけれど(爆)
でもお仕事ですもの!orz
いくらでも喘ぎ直すわ!あの時の勢いなら、AV女優の一人芝居だってできたと思うの。
「S◯X…私の切り札…!」

あえぐ編

『ナレーションの現場へ行く時は大人っぽく』

【樋口あかりの場合】
Y・Nちゃんもそうだけど、私もクライアントさんに訝しがられたことが何度かあったわ。
でも今考えると、仕方のないことなのよね。だって、Tシャツ・デニム・スニーカー・カジュアルバッグという、もう学生丸出しな感じの出で立ち(自分の好きな格好)で現場に現れたのだから。
当時は考えなかったのだけど、ナレーションの現場に来るクライアントさんというのは、一般社会で働いている一般人。だから、仕事時はスーツ系の服を着るのが当たり前。ナレーション録りとはいえども、一般の仕事場と同じだと認識しているわ。だから、お願いしたナレーターがそんなラフな格好でフラリと現れたら、やっぱり心配になってしまうのね。
「こんな人で大丈夫だろうか?」と。
まぁ正直、見た目で判断されてしまうのはやっぱり良い気はしないわ。「せいぜい頑張ってくれたまえ(°▽、°)」なんて、明らかにバカにしたような態度で肩を叩かれた日にはあなた、ねぇ(-_-)
(※中には見た目で判断しない人もいたわ♪)

そんなことが何度かあってから、私は服装をガラッと変えるようになったの。

【まずは見た目で「デキる人」を演出する】
私たち声優は、見た目よりも声で勝負する職業なわけだけど、でも、やっぱり見た目も声と同じくらい大事なのよね。というか所詮世の中、見た目よ(どーん)それに、クライアントさんを安心させることも大事。「きちんと仕事ができますよ」というのを、まず雰囲気で示すの。私の場合は、ちょっと極端だけど、上下のスーツでビシッとビジネススタイルでキメることにしたわ。そしたらどう!?面白いくらいに周りの反応がガラッと変わったの(笑)
おかげでとっても仕事がしやすくなったわ。クライアントさんの方もきっとそうだと思う。
ナレーションの仕事をする際、一番大事なのは「信頼」よ。
クライアントさんの信頼をどうやって勝ち取るか。これに尽きると、私は思うの。
(※アニメや吹替の仕事ももちろんそうだけれど)

もしくは、Y・Nちゃんみたいに、見た目を凌駕する実力を身に付けることよね。
☆-(ノ゜Д゜)八(゜Д゜ )ノ

注: 上記はあくまで「樋口あかりの場合」です。中には、ナレーションの現場でも特に気にせず、
自分の好きな服装で自由にやっていらっしゃる声優さんもたくさんいます。